10月1日。
いつメンと原神スイパラ会を堪能した後即解散したのでこのまま帰ろうかと駅に向かっていたところ、Twitterでバズっていたボーイミーツガール映画が30分後に上映することを知る。このまま帰るのももったいないし残り4席になるぐらい人気なので、とりあえず見に行くことにした。
そして、あっという間のようでとても長いような、自分が求めていたものを全部くれた、まるでウラシマトンネルの中のような83分を味わった後、今は終わりのない幸せに包まれ続けている――
というわけで映画『夏へのトンネル、さよならの出口』の感想です。
ここまでぶっ刺さった映画は続き物のシンエヴァを除くと3年前の天気の子やHELLO WORLD以来だし、両方ともじわじわ好きになっていったタイプなので、見てから毎日起きてから寝るまでひたすら主題歌をリピートしてるレベルのハマりっぷりとなると人生で初めて。生きてればいい出会いありますね。しかしこの2つと並べると……ほんとになんていうか……ボーイミーツガールばかり好きになるのが自分なんだな……
原作を読んでから書こうと思ったのですが、とりあえず初見での感想を残しておきたいので今書きます。というか、今色々なことに手を出していてやるべきことがたくさんあるんですけど、塔野カオルと花城あんずのことしか考えられなくなったせいで手につかない状態です。脳みそを一旦落ち着かせるには、感想を書く荒療治を行うしかなかった。
当然のことながら、以下ネタバレ全開なので注意。
まだ見てない方はめちゃくちゃおもしろい映画なので是非見に行ってください!!好みはあれど作品のクオリティは間違いなく高いと断言します。責任取ります。上映からもう3週間経った今、大ヒット作とは残念ながら言えないため公開が終わる場所も多いので少しでも気になったら急ぎましょう。夏が終わる今の季節にぴったりの映画ですし、絶対映画館で見た方がいいです。そして見てくれた貴方に刺さってくれたら、嬉しい。
一言で言うと、全てが好みの、数年に一度レベルの映画でした。
花城あんずという、黒髪ロングストレートで顔が美しくてミステリアスだけど芯が強くて特別になりたいヒロインが出てきた時点で「この映画は、神映画だ……!!」と心の中に眠るガチ恋レーダー(?)が反応してたのですが……
SF要素を含んだボーイ・ミーツ・ガール←最高。
2005年が舞台だけあってガラケーが登場し、ノスタルジーに溢れる雰囲気満載の”昔の夏”が舞台←最高。
複雑な過去から虚無感が漂う主人公と、特別になりたいと願うヒロインのラブストーリー←最高。
ただひたすら二人を描くお話にするための83分という短めの尺←最高。
極限まで余計なものを削ぎ落として美しさを追求した作画←最高。
物語を彩る美しいBGMとヒロインの心境を完璧に表現した主題歌←最高。
好きな要素しか、ありませんでした……
もう中盤ぐらいからずっと感情揺れ動かされて5秒に1回ぐらいいい映画だなぁって思ってました……とにかく雰囲気が良くて、見せ方が上手かった映画でした……
全てが素晴らしすぎてエンドロール終わった後に拍手しそうになりました。この感覚シンエヴァ以来だし初日だったらしてたと思う。
とりあえずパンフレット買ったし、帰宅後原作が在庫あまりなかったのでとりあえず電子で注文したし、コミカライズも全巻買いました。あと原作は紙でもほしかったので結局倍ぐらいの値段で買いました。あと映画館でしかグッズが売ってないのでそのためだけに外出してとりあえず売ってたものは全部買いました。ビニール傘売ってるのズルい。今週はこれらを堪能して過ごそうと思います。
あと特典小説の後日談も凄い良かった……花城あんず、8歳差になっても根っこの部分は変わってなくてなんだかすごい安心した……最高のヒロイン……
見てからもう3日経ってるのに、夏トンのことばかり考えてしまって他のことが手につかないから、本当に大好きな作品なんだと思います。花城あんずに恋をする感覚を味わっていたら、いつのまにかこの映画自体に恋をしていました……一旦気持ちを落ち着かせるためにこの文章書いてるから感想というよりラブレターなのかも。どんなに恋をしたって忘れられないの……
主題歌の「フィナーレ。」は花城から塔野への8年経っても色褪せない恋を歌った素晴らしい楽曲ですが、自分からこの映画への恋の歌のつもりでも聞いています。どんだけ好きなんだよ。しかし毎日花城あんずの恋心が詰まったこの曲ばかり聞いていると多幸感でそろそろおかしくなりそうです。「ずっと覚えとくよ」って言い回しがらしくていいよなぁ……
この映画の全部が好きなのでどこからどうやって語ればいいのかわからないので、とりあえずシーンを順番に振り返っていくタイプの感想となります。まだ一回しか見ていないのでセリフやシーンの細かい間違いがあるかもしれません。
もう出会いのシーンから好きです。この映画を象徴する舞台である駅での出会い。じっと見つめてると舌打ちしてくる花城に塔野はビニール傘を貸して、連絡先を交換することで、二人の物語が始まる。美しいボーイミーツガールです。親なんていないに気づかうどころか「それはいいね」って返答するところから塔野が只者ではないことを教えてくれるの親切な作り。
花城が転校してきて、川崎に絡まれたところを容赦なく血が出るほど強くぶん殴るところから「このヒロイン、すごい……!!」って思わせられて一気に引き込まれました。この映画は二人の関係性に終始焦点をあてた作りだったのでほぼカットされましたが、原作だと花城と川崎の関係性の変化もしっかり描かれているそうなので今から読むのが楽しみです。
その後、塔野が父親にストレスをぶつけられてから線路を渡って危うく轢かれそうになるのも印象的でしたね。希死念慮を持った主人公であることが明かされて、初日クラスメイト出血ヒロインとどう仲が深まっていくのか。もうこの時点でワクワクが止まりません。
そこからウラシマトンネルに潜り、なくしたものを手に入れて、一週間経っているというSF展開のはじまり。ここまで開始20分もなかったと思うのですが、主人公・ヒロイン・SF要素の全ての説明が完了したのでテンポが素晴らしい映画ですね。
回想で塔野の妹の死が明らかになり、彼の抱えている虚無の真実が徐々に明らかになります。そしてウラシマトンネルにもう一度に挑戦しようとしたらまさかの花城が追いかけてきてる展開。いや、ストーカーするか?普通。とんでもない主人公とヒロインだ……
ここから二人の共同戦線が始まります。プレロマンスが流れるの、二人の恋が始まった!という感じで良い演出。最終的には人生の共同戦線になるという話は置いておいてSF的要素を2人で一つ一つ検証していくのは丁寧ですし見応えがありました。このトンネルという未知に惑わされるのではなく、仕組みを解明していってどう利用するか?と考えるところがこの映画の面白いポイントですね。
ここはYoutubeの本編映像公開で振り返れるのでありがたいです。
開幕の飛行機雲が二人の関係性を象徴していて、関係性の変化と共に飛行機雲も変わっていく。こういうシンプルなアニメ的仕掛けがいいよなぁ……
あと二人が覆いかぶさるシーンの花城あんずの美しさは凄い印象的でした。
なんで販売してるポストカードにこのカットがないのでしょうか。グッズでくださいマジで。
「塔野くんてちょっとエッチだよね」←たまらん 二人のこういう日常を三時間ぐらい垂れ流すだけのスピンオフアニメがほしいよ……
そして次は水族館デート。おめかししてる花城あんず、可愛すぎるな……
カオルが死んだ妹を求めている事実がしっかり明かされ、とんでもないなコイツとスクリーンを見ている我々に教えてくれます。交差することのないジンベイザメが、今の二人の想いを表していますね。すいませんこのシーンはあんずが可愛すぎて彼女の表情や反応をしっかり記憶しきれてないので2週目はちゃんと見ます
追記(10/9):2週目見ました。トンネルにいる時の塔野を全然怖くないっていう花城、この人のこと本当に大好きだね……
三連休を使って求める物を手に入れようとしたものの、花城が探していたらしい原稿用紙をかき集めたおかげで大幅時間オーバーに。そして花城の家にお世話になる展開に!ここでもかなり画面が暗くて淡々としていて、今思うと塔野どれだけ味気ない世界に生きてるんだよって思うな。こんな可愛くて美しいクラスメイトの女子の家に行くのに。
ここで花城の祖父との絆が語られます。学校でも繰り返し読むぐらい祖父の漫画が好きだなんて、家族愛が強いヒロインが結構好きなので素晴らしい映画だ……ってこの時点で心の拍手を送っていました。
そんな彼女がほしいのは才能で、特別になって生きた証を残すのが目的。ユーフォの高坂麗奈が好きな自分にとってはここまで好みな造形の女性キャラに出会えたことに感動していたのですがそれはさておき、これだけここまで花城あんずという少女の芯の強さを見せつけておきながら、あくまで自分は「普通」だと思っていて、特別なものが欲しいと願う一人の人間だという事実に完全に魅了されてしまいました。まだ書いたものをプロに見せたわけでもないのに、自分を卑下して踏み出す勇気も自信もなくただ才能を渇望する彼女の弱さが美しい。
しかしここまで虚無にあふれていた塔野は、彼女の漫画を読んで熱のこもった感想を届けます。褒められて感情を抑えきれず足バタバタする花城、ちょっと可愛すぎるだろ。
そしてこの映画でトップクラスに好きなシーン。欲しいもののために何でも捨てれる君の方が特別だと言い放つ花城。
「私にも貴方が見てる世界見せてよ」
「味気ない世界だよ」
「それも悪くないね」
と美しい会話と共に押し倒します。
このカットのあまりの美しさに息を呑みました。花城のロングヘアが塔野の顔を囲う檻のようになっているのが素晴らしい。塔野から見える世界のように暗くて基調のない画面でも、彼女の美しさは目を見張るものがあります。髪フェチの自分にとっては話も絵も全てがたまらない最高のシーンでした。ありがとうございました。
力強さに溢れているようで、才能を渇望し奇跡に頼りたくなる弱さを持つ花城あんず。
そんな彼女が、死んだ妹を取り戻すために全てに犠牲をしようとしている常人離れした思想を持つ塔野カオルという”特別”さに溢れた人間に惹かれていくのは凄い納得しました。ラブストーリーなので、好きになっていく過程が丁寧なのはとても好印象ですね。
8月が近づく中、2回目のデートは夏祭り。塔野、自分から誘ってえらいぞ。浴衣姿で髪まとめてる花城あんずにまた魅了されてしまいました。
フィナーレ。の最後の花火をあげて~の部分ですね。Youtubeで見られるMVは歌詞に合わせた編集が非常に丁寧でしっかりこのシーンを振り返れるのでぜひ。
曲と合わせて振り返ると、この曲の花城の心境がよくわかりますね。好きって素直に認めないツンデレなところあるけど塔野のこともう大好きじゃん……フィナーレ誓っちゃうじゃん……
花城側から手を繋ぐのが、いいんですよね。ベタなシーンだからこそあくまで特別に憧れている彼女の普遍性が表れていて……花火の表現が鮮やかで、恋の雰囲気が溢れ出ていて、この映画屈指の名シーンだと思います。もう花城の部屋のシーンから全部名シーンなところあるけど。
ここでトンネル突入予定の8/2が妹の命日であることを話す塔野。二人の危うさと覚悟を見せつけられるまさに青春映画と言えるシーンです。友人が「塔野はメイドインアビスの世界にいたら躊躇なくラストダイブを決行するタイプ」と彼の精神性を的確に表現してたの面白かった。
だが状況は変化します。塔野の父親は妹の命日を前に再婚相手を紹介しようとし、カオルは混乱のあまり嘔吐してしまう始末。酒におぼれて息子を殴るのは最低な一面もあるとはいえ父親なりに人生を歩こうとしているのかもしれないけど、何も塔野の気持ちを考えていないのは酷いよなぁ……
部屋に戻り、花城からメールが来た時の塔野の救われたような表情の変化が良かったですね。彼の世界にもかけがえのないものが現れた証拠。
喫茶店で編集者がついたと打ち明ける花城。しかし、塔野は作戦を延期しようとするも彼女の意思は変わることはありませんでした。とりあえず食べようよって塔野が言うの、彼の人付き合いの性質が表れてて好き。
そして個人的この映画のベストシーン!!2回目の駅での、塔野が花城を元気づけるための出会いの再演です。
とっても青春って感じで、くすぐったすぎて、すごい見ていて幸せでした。二人の距離がどれだけ縮まったかをこのワンシーンで表現しきっていて、もう本当最高でした。塔野がはじめて思いっきり笑うの凄いグッとくる。これ原作にはないシーンらしいので、脚本を務めた監督の凄さがわかります。
ここで今までは観客には認知できなかった満開のひまわりがカメラの変化により映されるのは感動しました。この映画で五本指に入るほど素晴らしい演出ですね。ひまわりの花言葉、情熱とかあなたは運命の人とからしいです。全部が美しいよ……
というか今思えばこれが花城にとっては長い別れの前の最後の想い出なのひどすぎるだろ。そりゃ8年引きずるわ。
そんな幸せな二人でしたが、花城の言った通り"欲しいもののために何でも捨てられる"のが塔野カオルという人間です。見ている時は1000年後がどうとか会話してるから花城が一人でトンネルに入ってしまって追いかける話かと思いましたが、そんなことはなかった。片方取り残された方が切ないもんな。
もはや病的とも言える妹への執着を捨てられず、メールを全て削除してしまい、トンネルに突入し携帯電話を捨てて一人で進み続けます。
ただ、全てを捨てたように見える彼ですが、一つだけ捨てられないものがありました。それは、彼女を想う心。なくしたものが手に入るトンネルだから、花城の欲しいものは手に入らない。だから、漫画を描き続けてほしい。いつか、未来で読めるように。
出版社の目に留まる彼女は、その時点でもはや特別。だから、こんな場所に入るべきじゃない。塔野の思いやりが見えますね。まあ、花城はそんなこと望んでないんだけど。怒りのメールを送り続ける花城の切なさが伝わる演技が良かった。飯豊まりえさん、シティーハンターの時から思ってたけど声優って言われてもおかしくない演技力の持ち主ですよね。
塔野が十数時間歩き、もう現実世界では何年も経っている中、開かれた玄関の扉から妹のカレンと再会します。幸せな時間を過ごすも、お兄ちゃんは他の人を好きになってほしいと願うカレン。そこで捨てたはずの携帯電話を見つけ、そこには花城からの消したはずのメールが。”なくしたものが手に入る”トンネルだから捨てたはずの携帯電話とメールがそこにある、というお話作りが丁寧ですね。
ここからがこの映画の醍醐味であるSF要素を活かした見所のシーン。現実世界に残された花城からのメールが時間の経過と共にどんどん届き、変化が描かれます。無事漫画家になりアシを雇い仕事場を用意するまで成長するも、大ヒットとまではいかず4巻で連載終了。ここでガラケーがスマホに変わっているのに感心しました、時の流れを感じさせることでより若干古い舞台設定を活かしています。返せなかった傘をずっと抱える花城、未亡人の雰囲気を纏っている……しっかしどういう漫画書いてたんですかね。この経験を元にしたラブストーリー書いてたりするのかな。読みたい。
届き続けるメールにより、塔野カオルは何年経っても花城あんずの変わらない想いに気づく。そして彼が気づいた感情、”恋”こそが、ウラシマトンネルを本来の都市伝説で語れる”欲しいものが手に入る場所”にします。妹への執着から決別し、現実に向き合うことを決めた彼は本当に求めていた大好きな彼女を求めて走り出す――
彼女へのメールを送りつつも転んで気絶してしまう塔野でしたが、一方花城は出会った駅であの時を思い出して借りたビニール傘を抱えて駅で独り泣いていました。ここでの駅は気持ち今までより鮮やかに描かれている気がしました、塔野ではなく花城を通して見た世界だからでしょうか。しっかし8年経っても帰ってくるかもわからない男をここまで想い続ける花城の一途さ、最高のヒロイン。こういう展開をやると「現実だったら8年経ったら他の男にいくだろ!」と突っ込まれそうですが、彼女みたいな精神性の人間が現実にいたらちゃんと8年待つだろうなと思えますしね。別に塔野のことを忘れて新しい恋に踏み出す選択もありだし、こんだけ時間が経ってれば一度や二度はそういったことを考えたのかもしれないけど、彼と過ごしたわずか1ヶ月あまりの思い出は、彼女の世界を変貌させてしまうのは充分だったでしょうから。何より、共同戦線はまだ終わっていない。
待っている間もこうやって独りで泣いてしまうこともあったんでしょうけど、今回はスランプで漫画がうまく書けず休業し精神的にもついに限界が来ているようにところだったので、いよいよ危うい状態に見える花城。そこに塔野からの「大好きだ」のメールがベストタイミングで届きます。そして彼女もまた、欲しい物のために走り出す。塔野カオルという、ハッピーエンドよりも、甘くて豪華なデザートよりも、幸せな恋をくれる彼のために。
ついにラストシーン。目が覚める塔野でしたが、花城が膝枕をしています。そして想いを改めて伝えあった後、美しいキスシーンに。"10秒で6時間半のキス"、なんてロマンチックなんだ……ネタバレになるけどこれをこの映画のキャッチコピーにしてもよかったと思う。
トンネルから出ると、13年後の世界に。季節は秋でした。降り始める雨、花城は借りていたビニール傘を開き、現実へ向かって共に歩き出すところで物語は幕を閉じます。色々と大変なこともあるのでしょうけど、トンネルから出て現実に向き合う強さを手に入れた彼らならきっと大丈夫。完全無欠のハッピーエンドをありがとうございました……原作だとエピローグがじっくり描かれているらしいので、読むのが本当に楽しみです。
この記事でも散々引用した「フィナーレ。」が流れるエンドロールで余韻に浸る時間が本当に心地よかったのを覚えています。おかげで見終わってからこの曲起きてから寝るまでずっと聞いてます。このままだと花城あんずになりそう(?)
あと公開時期が絶妙。夏が終わって秋になるタイミングで公開するのは、映画ラストとのシンクロ具合がエグい。映画館でこの映画を見れて、本当に良かったです。
さて、ずいぶん長くなってしまいましたがシーン別の振り返りも終わったので、最後のまとめに。
ちなみにキャラクター別の感想も書こうと思いましたが、映画だと実質二人しかいないし花城あんずラブレターになって本気で恥ずかしいのでやめておきます。いや、もう散々語ってきたし既になってるが……
この映画は、言ってしまえば"よくあるラブストーリー"です。
人によっては序盤中盤のSF要素であるトンネルの検証パートがピークで、それ以降は期待ハズレとまで言われるかもしれません。
異常なまでの過去への執着を抱えた主人公は、大好きな女の子の大切さに気づいて自らトンネルを出ていく選択をする。
ウラシマトンネルの真相は明かされないまま、SF的な壮大な設定は何一つ理由を示されないままに物語は幕を閉じる。
ファンタジーに満ち溢れた二人の物語は、経歴上困難なことはあるかもしれないけどもなくしたものは戻らない当たり前の人生を歩いて行く、これからは平凡なラブストーリーになるでしょう。
ラブストーリーとして見れば全てが丁寧で、王道な映画で特有の魅力を持っている映画ですが、めちゃくちゃ新しいかと言われると、これだけ大好きでもそうとは言えません。
でも。
この映画はそれでいいのだと思います。
「フィナーレ。」のラストの歌詞に、この映画の全てが詰まっています。
味気ないね
でもそれがね
ふたりの幸せ。
フィナーレ。/eill より
味気なくて、素っ気ない世界。
でも、それが、ふたりが選び取った世界。
塔野カオルと花城あんずは、困難ばかりで奇跡なんてない世界で、それでも隣に貴方がいる掴み取った幸せを噛み締めて生きていく。
この映画の好きな部分として、「塔野の見ている世界が、花城と出会ったことでどんどん鮮やかになっていく」というお話ではなかったところです。花火も、ひまわりも、鮮やかには映されていたけど、誇張されて描かれず徹底して落ち着いた雰囲気を纏っていた印象があります。今思えば塔野の目を通して見える世界なのでしょう。そういった独特の雰囲気がこの映画の最大の魅力の一つで、ここまで虜になった理由なのだと思います。
あくまでそういった味気ない世界を塔野は生き続けていて、花城は同じ景色を見たいと願っただけ。そして塔野が見ている味気ない世界の中であっても、花城はかけがえのない存在となる。彼の見える世界を変えたいとは思わず、そこに混じりたいと願う彼女という関係性がまた美しいお話でした。
自分たちの生きる世界に、なくしたものが手に入るウラシマトンネルなんてもちろんありません。ある意味味気ないと言えるかもしれない。
でも、映画館から出た後の自分にとっては、この映画という大切なものが増えたことで、現実世界も悪くないと前より思えるようになりました。
一生忘れることのない、本当に素晴らしい映画でした!映画に関わった全ての方々に感謝。今後の展開も楽しみにしています。とりあえずグッズは全部買うし、円盤も楽しみです。映画の花城のキャラデザがドストライクなのでこれからもたくさんグッズが出ることを祈っています。
「塔野くん」「花城」
「「行こう」」
共同戦線を続ける、二人の未来に幸あれ――
はぁ……8歳差の二人の共同生活見たいな……原作ならもうちょっと語られるのかな……もうカオあんのことしか考えられないな……もう二次創作するしかないのかな……もっと作品理解を深められたら書くかも……
P.S.というわけで翌年の夏コミで本当に本を出しました。ありがとう夏トン